2020/04/01 01:43

オランダ黄金時代の市民階級と「鳥屋」


メルヒオール・ドンデクーテル(Melchior d’Hondecoeter, 1636 -1695)は17世紀のオランダの画家。彼の生涯はスペインから独立を果たしたネーデルラント共和国が経済的にも文化的にも栄えた「オランダ黄金時代」と重なる。貴族や教会よりも商人の力が強まるこの時期、市民階級のための芸術が生まれた。西欧絵画は歴史画や宗教画—肖像画風俗画風景画静物画のヒエラルキーを持っていたが、鑑賞に特別の教養を必要としない下位ヒエラルキーの題材は市民階級に好まれ、新たな市場となった。オランダのプロテスタントが宗教画を禁じたことも影響する。富を表す豊かな食物や、貿易大国ゆえの異国的な花や動物画も好まれた。


中世のギルドが残る一方で芸術大学が生まれ、ドンデクーテルも大学で学んだ。画家はそれぞれ花や風景など、固有の題材を扱うのが常だった。ドンデクーテルの題材は主に鳥である。


この《鳥のコンサート》(油彩、1690)は、あり得ない種類と量の生物が一枚の画面に収まる点において、同時代のオランダが先鞭をつけ、17世紀から19世紀にその中心が英仏に移った博物画しばしば見られる表現方法と似ている。しかし、啓蒙思想の一環である図鑑出版の文脈において印刷・配布に適した版画による挿絵として描かれる博物画とは、目的も技法も異なる。


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