2020/04/01 01:54
世紀末イギリスの過剰な欲望 イギリスの鳥類学者ジョン・グールド(John Gould, 1804-1881)の『イギリス鳥類図譜』(リトグラフ、1862-1873)よりワシミミズク。グールドは庭師の家庭に生まれ剥製技術を身に付け、リンネ学会の運営するロンドンの剥製博物館で働き、大英帝国が世界各地で収集した鳥類を剥製化し、そのスケッチを妻エリザベスとともに当時開発されたリトグラフに起こし、世界の鳥類図譜を制作した。ダーウィンはグールドの鳥類図譜を見て進化論を考えつく。 17世紀半ばにオランダなどが先鞭をつけ、17世紀後半から18世紀の啓蒙思想に伴い英仏で栄えた博物図鑑出版は、19世紀末イギリスにおいて単純な啓蒙思想に回収しきれないある種の過剰さを持つに至る。産業革命などを経て世界の見え方や生活形態が変わり、一個人の触れ得る情報量も格段に増える中で、不確かなものとしてたち現れてきた世界を確かに把握する必死の作業としての収集・分類・解釈が行なわれたとする説がある(参考:高山宏『殺す・集める・読む』創元ライブラリ、2002)。この説によれば、モノを収集し分類し根拠付けるシステムである博物館や博物図鑑出版、そして19世紀末イギリスで発明されたジャンル「推理小説」は同根であり、収集された「証拠」に基づいて「謎」を解くダーウィンはホームズと似る。 ほとんどの鳥類は自分の産んだ卵を温め、孵化したヒナが成鳥になるまで夫婦で世話をする。従って、鳥類図譜において卵から成鳥までさまざまな段階の鳥を一画面に描く場合は、鳥一家の生活風景として描くことができる点でメーリアンの昆虫図譜と異なる。